衝撃の実話!映画【暁に祈れ】地獄を生き抜いたボクサーの物語。感想と解説

ヒューマンドラマ

<実話映画>タイの刑務所で地獄を見たボクサーの復活を描いた衝撃作【暁に祈れ】麻薬で逮捕されたビリーは、不衛生な監房に入れられ、凶悪な囚人たちに囲まれる。絶望の中、必死で戦った男の凄まじいドラマ。あらすじ、ネタバレ感想&解説。

※この記事は「映画でbreak!オレ・モカ」に記載した過去記事を移転したものです。

 

カモコです(^▽^)o

日本公開時からずっと見たかった『暁に祈れ』をやっと見ることができました!

期待通りの迫力ある映像と重厚なストーリーに大満足でした。

以下『暁に祈れ』のあらすじ、解説とネタバレ感想です。

 

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「暁に祈れ」作品情報

 

ジャンル:ヒューマンドラマ、実話
原題:A Prayer Before Dawn
監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
時間:117分
製作国:フランス、アメリカ、イギリス、中国合作
フランス公開日:2018年6月20日
日本公開日:2018年12月8日

 

「暁に祈れ」あらすじ

 

タイで暮らすイギリス人のビリーはボクサーだが、闇試合に出場するほど落ちぶれ、麻薬に溺れて破滅的な毎日を送っていた。

ある日、ビリーのアパートにタイ警察が乗り込み、ビリーは薬物所持・使用の罪で逮捕される。

チェンマイの刑務所に送られたビリーは、多くのタイ人犯罪者と共に収監される。タイ語ができないビリーは、看守や囚人が何を言っているかわからない。

ある時、囚人たちの喧嘩に巻き込まれたビリーは、大部屋に移されるが、その部屋は凶悪犯罪者が集められた監房だった。

囚人同士の喧嘩やレイプ、時には殺人すら起こる地獄のような監房で、ビリーは憔悴し、再び麻薬に手を出してしまう。

絶望の中、精神がギリギリまで追い詰められたビリーだが、所内にムエタイチームがあることを知り、興味を持つ。

ムエタイチームのリーダーに必死で掛け合い、練習に参加することを認められたビリーは、メンバーと共にムエタイの技と精神を学び、生きる気力を取り戻していく…。

 

 

「暁に祈れ」感想(ネタバレなし)

 

実話を映画化した『暁に祈れ』は、堕落したボクサーの復活を描いた素晴らしい映画です。

 

多くの人に見て欲しいと思いますが、人によっては気分が悪くなると思います。ビリーが体験したタイの刑務所暮らしは、日本人の想像を絶しています

 

ビリーが収監されるタイの刑務所は、不衛生極まりなく、特にトイレの場面は見るだけで吐き気を感じるでしょう。全身に入れ墨を入れた囚人たちが監房にぎっしりと詰め込まれて眠る場面も視覚を刺激します。

 

また、刑務所を舞台にした映画によくあるように、囚人たちは容赦なく暴力を振るい、同室の男をレイプしたり、恐喝したり、殺したりします。この映画では、そのような目を覆いたくなるシーンをリアルに再現しています信じられないほど凄惨で、残酷です

 

どうしてビリーが地獄のような刑務所に収監されたのか。それは彼が麻薬中毒者だったからです。

タイでは麻薬所持・使用は重罪。

タイ政府とタイ警察は、麻薬の取り締まりに厳しく、例え外国人でも容赦しません。

 

ビリーは、通訳なしではタイ語がわからないため、何がなんだかわからないままに囚人たちと行動を共にします。時に刑務官から怒鳴られますが、彼らが何を言っているのかビリーにはわかりません。

言葉がわからない世界で独りぼっちというビリーの状況が映し出され、映画を見る私たちに大きなストレスをかけてきます。

 

映画前半のビリーには絶望しかありません。地獄のような世界で彼は苦しみ抜きます。何か少しだけでも彼がリラックスできるようなシーンがないかと期待しますが、良いことは何一つ起こりません。まさに熱帯の地獄です。

 

映画が後半に入った頃、ようやく彼に希望の光が差します。ビリーは刑務所の中にある囚人のムエタイチームに入るのです。

 

元々ボクサーだったビリーは、ムエタイの練習に励むチームに参加して、堕ちるだけ堕ちた自分を変えようと努力します。そうしたからといって、何もかも上手くいくわけではないのですが、彼の心には希望が芽生え、明るい表情を見せるようになります。チームメンバーとの信頼関係も築きます

 

後半には、微笑ましいシーンや人の善意を感じるシーンがあります。その時にほんの少し安堵を感じることができますが、映画の大半はビリーが直面する過酷なシーンのみ

 

ラストまでずっしりと重く、痛みと苦しみがまとわりつく物語です。

覚悟してご覧ください。

精神的にキツイ映画ですけれど、見応え十分な素晴らしい作品です。

 

『暁に祈れ』は、Amazonプライムビデオで有料レンタルできます。

レンタル店でも借りることができますよ。

 

※以下、ネタバレを含む感想です※

 

「暁に祈れ」ネタバレあり感想

※以下、ネタバレを含む感想です※

 

バンコクに住んだことがあるので、タイの映画(もしくはタイを舞台にした映画)にとても興味があるんです。『暁に祈れ』は公開された時に見たかったんですが、近くの映画館では上映されず、レンタル待ちで今になりました。

 

この映画は、撮影方法が工夫されてますね。人物が言葉を発しなくても、画面から彼らの心情が伝わってきます。特に、人物に纏わりつくようなカメラワークが素晴らしい!

 

一番気に入ったのは、ビリーが入れ墨を入れるシーンです。ビリーを取り囲む囚人たちの首や背中をカメラが滑るように移動し、彼らの入れ墨を大きく映し出します。彫師は真剣な面持ちで針を持ち、囚人たちは神聖な場所を作るかのようにビリーを取り囲みます。入れ墨がビリーにパワーとツキを与えると信じているであろう、囚人たちの真剣な思いが伝わってきました。

 

一方で、カメラは刑務所の汚い部分もしっかり映し出します。不衛生極まりない刑務所内の様子はもちろん、複数の囚人が同房の男を犯すシーンもリアルに映されていました。この一歩も二歩も深く踏み込んだ表現が、ビリーのおぞましい体験を観客の目に焼き付けます

 

この映画は『ミッドナイト・エクスプレス』とよく比較されていますが、私は『暁に祈れ』の方がもっと残酷で、強烈だと思います。『暁に祈れ』には、本物の囚人が出演し、暴力的なシーンが生々しく再現されているからです。

もちろん、映画が撮影された年代が違うので単純に比べられません。

ストーリー構成は『ミッドナイト・エクスプレス』の方が面白いと思います。後半で主人公の運命がガラリと変わる時の絶望感が強烈です。

 

タイトルが秀逸

 

映画のタイトルでもある「A Prayer Before Dawn」という本のタイトルは、「prayerがplayer」を「dawnがdown」を暗に示しています。

夜明け前に祈る者」と「ダウンする前の選手」と、両方の意味を掛けているんですね。

人生のどん底に堕ちる寸前のボクサーが、人生を掛けてチャレンジする物語にピッタリの、良いタイトルです(^-^)

 

 

タイは人口の90%以上が仏教徒です。悪者ですら仏様を尊敬し、祈りを捧げます。

映画の中で囚人が歩いている途中でさっと両手を合わせて拝むようにするシーンがありました。恐らく彼は刑務所内の祠(仏像の祭壇に手を合わせているのでしょう。

「祈り」はタイ人の人生そのものだと思います。

邦題の「暁」という文字は「ワット・アルン(暁の寺)」を、英題の「prayer」はタイとタイ人を思い起こさせるのがいいですね。

 

絶望しかない前半と希望を感じる後半

 

ビリーがムエタイチームに入るまでのストーリーには、救いが一切ないですよね。

囚人や看守と友情を育んだりしないし、ほんの少しでも笑顔になれるような出来事は起こらない。それどころかビリーの状況は悪くなる一方です。何か少しでも良いことが起こればいいのに、と願わずにはいられませんが、そんな私たちの希望をも粉々に打ち砕く、凄惨なシーンの連続です。

囚人同士のケンカは、リアルな描写で容赦なし。ビリーが他の囚人を痛めつけるシーンも容赦なし。残酷な暴力描写に胸が悪くなります。それに、あのおぞましい囚人のレイプシーンは寒気がしますね。

 

ビリーがムエタイチームの練習に参加するようになってから、ようやく希望が見えてきます。ここでやっとホッとしました。

監房も待遇のいい方に移してもらえたし、チームのメンバーとの間に少しずつ友情が芽生えていきます。言葉はわからなくても、肉体と精神でムエタイを習得するビリーと、熱心に教えるトレーナーの姿に感動しました。

仲間たちが自分たちのことを話すシーンもいいですね。「ムショ暮らしに腹が立ったから3人殺して刑期が伸びた」とか、「家が貧乏だから殺し屋になった」とか。笑える話じゃありませんが、ビリーに打ち解けていることが良くわかります

刑務所にいる囚人だったとしても、仲間がいるのが一番ですよね。後半にはビリーが笑顔になれるシーンが少しだけあるので、前半よりは気が楽でした。

 

 

タイ語は難しい…

 

このブログで数本のタイ映画を取り上げています。その度に書いてますが…タイ語は難しいんです!

文法はすごく簡単なんですけど…文字と発音が…めちゃくちゃ難しいです。

 

映画のビリーはタイ語が全くできない設定です。バンコクやチェンマイなど、都会の中心部に住み、英語が話せる人と仲良くしていれば、タイ語が話せなくても不自由しませんからね。

しかし。実際タイに住んでみて感じたのですが、バンコクでも英語が流暢に話せるタイ人は少ないです…。

 

刑務所内のビリーは、見よう見まねで看守の指示に従い、なんとかうまくやっていましたが、内心とても怖かったと思います。周りの人間が何を言っているか全く分からない所にたった一人なんて…焦るし、ストレス溜まりますよね。特に目の前でベラベラとまくし立てられたりしたら。

 

だけど数の数え方くらいは覚えても良かったのでは…監房で点呼する時、ビリーは「43番」なんです。タイ語で”シーシップサーム”です。ビリーが言えないので、隣のおじさんが、「(ビリーが)43、(そして自分が)44!」といっつも言ってくれてます(笑)

あのおじさん、最後にハグしたりして、唯一親切な人でしたね(^-^)

 

ビリー・ムーアご本人は、タイ語が話せたそうです。映画は脚色されてますからね。演出ですね。

 

不衛生なトイレの臭い

 

刑務所内のトイレの汚さに「うえ~…」っと気持ち悪くなった人がたくさんいるでしょう。

見るに堪えない汚さですよね…しかもトイレの中で暴力行為が始まって、汚い所に押し付けられたりするし(-_-:)

 

私がタイにいた間に、あそこまで汚いトイレに入ったことはありませんでしたが、あの3分の2くらい(?)の汚さのトイレはたまに使わなければなりませんでした…。

 

映画を見るだけではわからない、タイの恐怖のトイレ事情とは…「臭い」。

タイでは使ったトイレットペーパーを便器に流すことができないので、お尻を拭いた紙は便器の横にあるゴミ箱に捨てるんです。

バンコク市内のキレイなビル内なら、ゴミ箱にフタがありますけど、普通はありません。他人の汚物が丸見えで、臭いがすごいです…。

この映画でトイレのシーンを見るたびに、あの臭いが思い出されました…臭いって脳に強烈に焼き付けられますね…。

タイのトイレを使う時は、入る前に腹をくくってから入ってください(;・∀・)

 

クロンプレム刑務所

 

映画の中のビリーが収監される刑務所の名称はハッキリしていませんが、バンコクのクロンプレム刑務所(Klong Prem Central prison)で間違いないようです。実際にビリー・ムーア本人が入った刑務所です。(最初はチェンマイの刑務所に収監され、その後クロンプレムに移動しています)

 

ウィキペディアを参照したところ、クロンプレムには25年以下の服役者が収監されるそうです。男性用の監房には、56ヵ国からの外国人受刑者が約1,100人いたとのこと。(2002年時点)

 

場所は、バンコク北のチャトチャック地区にあります。多くの観光客が訪れる「チャトチャック・ウィークエンドマーケット」の側です。

 

ウィークエンドマーケットには何度も行きましたが、まさか世界でも悪名高い刑務所がそんなに近くにあったとは、全く知りませんでした。

 

あの水は…

 

ビリーが刑務所に入ってからすぐ後に、水場でのケンカのシーンがありますが…あの水は…飲み水なの?

タイの水はお腹を壊すので飲んじゃいけないんですよ…あの囚人たちは平気でしょうけれど。

考えてみれば、刑務所でミネラルウォーターなんて出る訳ないですよね…

私たちみたいな普通の日本人があの水飲んだら確実に病気になりますよ。

タイで何が怖いって、水が一番怖い…(-_-;)

 

戻ってきたビリー

 

ラスト直前、試合には勝ったけれど大量の血を吐いてしまったビリーは、バンコク市内の病院に収容されます。

目覚めたビリーがトイレに行ったら、監視を兼ねた看護婦さんがいなくなってる…タイならありそう~

ビリーはそーっと病院から逃げ出します。

鉄の足かせ付いてるのに、街中の誰も気づかない…タイならありそう~

脱走犯として捕まって、ひどい目に遭わされやしないかとドキドキしましたが、ビリーは自ら病院に戻ってきました。

このシーンはとても印象的でした。線路の先を見つめるビリーは、逃げ回る人生を選ばなかったんですね。

 

病室に戻り、ベッドに腰かけ、ふうーっと息を吐くビリーは、自らの運命を受け入れ、試練を乗り越えようと覚悟したように見えました。

 

「暁に祈れ」原作

 

原作は、ビリー・ムーア(Billy Moore)の自伝「A Prayer Before Dawn: My Nightmare in Thailand’s Prisons」

 

ビリーの父親役で最後に少し顔を見せたビリー・ムーア本人は、母国イギリスでヘロインとアルコール中毒になり、再起をかけてタイへ移住したそうです。そしてプロのムエタイ・ボクサーとなりますが、チェンマイでまたまた薬物中毒に。そこからの彼の人生が映画の通りとなります。

 

ラストシーンの彼の表情には心を動かされました。映画の撮影とはいえ、当時の辛い思い出が蘇ったでしょうね。過酷な運命を体験した本人にしか出せない、良い表情でした。

 

ビリー・ムーアは、スタローンの『ランボー/最後の戦場』にスタントマンとして参加しているそうです。(刑務所収監前)ビリー・ムーアでググると、スタローンと一緒の写真が出ますね(^-^)

 

「暁に祈れ」キャスト・監督

 

タイ語がわからないビリーが置かれた過酷な状況を伝えるためでしょう、映画の登場人物の名前や肩書が呼ばれることはほとんどありません。

また、囚人を演じた人のほとんどは、なんとタイ現地の元囚人たち。あの全身の入れ墨は本物です。タイで服役することの過酷さを知る彼らが出演したからこそ、暴力的で残酷な刑務所のシーンがリアルに再現できたんですね。

 

キャスト

主役のビリーを演じたのは、ジョー・コール。映画『グリーンルーム』やドラマシリーズ『ピーキー・ブラインダーズ』に出演しています。精神的に深くダメージを受け、消耗していくビリーを演じるジョー・コールの表情が真に迫っていました。彼の演技は映画批評家からも絶賛されています。

 

刑務所の責任者を演じるのは、ライアン・ゴズリング主演の『オンリー・ゴッド』に出演したヴィタヤ・パンスリンガム

 

少ない出番ながらも彼は存在感がありました。ビリーがムエタイの試合に出た時の表情がいいですね。オンリー・ゴッドのクライマックスのバトルシーンでもいい演技を見せてくれました。(映画はほとんど意味不明でしたが…)

 

ビリーのトレーナーを演じたソムラック・カムシンは、アトランタ五輪で金メダルを獲得した実際のボクサーだそうです。Bangkok Postの映画批評で、彼にあんな演技力があるとはと驚かれていました。私も彼が俳優ではないと聞いてビックリしました。演技がとても自然だったので。

 

監督

フランス人監督のジャン=ステファーヌ・ソヴェールは、映画『ジョニー・マッド・ドッグ』の監督として知られています。

 

この映画を見たことはありませんが、こちらも重そうな映画ですね。反政府軍の少年兵の物語だそうです。興味のある方はぜひ。

 

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「暁に祈れ」感想まとめ

 

『暁に祈れ』を多くの人に見てもらいたいと思います。

若い人たちの中には、タイに移住することを気楽に考えてる人がいます。移住自体は構いませんが、浮ついた気持ちで外国に行くと、現地でついつい羽目を外し過ぎたり、知らずに犯罪に関わってしまうことがあります。タイでビリーのように麻薬に手を出す移住者が大勢いるようです。

私は2年間をタイで過ごし、面白い経験をしました。振り返れば貴重な経験ばかりです。たくさんの人にタイの良さを知って欲しいです。

一方で、タイで人生を破滅させた日本人の話もたくさん聞きました。ビリーのようにタイの刑務所に収監された人のことも。

『暁に祈れ』を見て、外国で暮らすことにはリスクが伴うことを知って欲しいと思います。